利益をむしばむロスをなくそう


飲食店の儲けの仕組みを知ろう

さまざまなロス

飲食業は利益率の少ない業種のひとつです。それは食材や人件費、家賃、水道光熱費などとにかく経費がかかるからです。それに加えて、怖いのが知らず知らずのうちに発生してしまっている「廃棄ロス」や「オーバーポーション」です。これらをいかに最小限に抑えて営業していくかが、重要な経営ノウハウのひとつと言えるでしょう。

廃棄ロス

原価率を押し上げる大きな要因のひとつが食材の廃棄ロスです。仕入れた食材を結局使わず腐らせてしまった、落としたり割ったりして使えなくなった、仕込みを失敗して使えなくなった、などの理由で廃棄せざるを得なくなってしまう損失のことです。精肉、鮮魚、野菜などは日持ちしないため、計画的に仕入を行わないと腐らせてしまいます。また、仕込みや調理を失敗するとお客さまに提供できず、使用した食材や調味料はすべて無駄になってしまいます。

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このように、ある程度消費期限の長いドリンクボトルや調味料とは違って、食材は鮮度やどの程度売れるのかを見極めながら発注しなければならないため、かなりの経験とノウハウを要します。新しくオープンしたお店ではそのあたりの知見を得るまでに一定の期間が必要です。そこで、食材の廃棄を最小限に抑える方法として冷凍食材や加工済み食材の活用があります。冷凍食材というと手抜きのイメージがありますが、メニューによっては積極的に活用すべきです。調理の過程で発生するロスや調理の失敗などのミスを防ぐことができます。加えて冷凍食材は消費期限が長いためすぐに腐ってしまうこともありません。もちろん、これらは大量生産されている商品ですので、多用すればお店の個性が失われますし、一から手間暇かけて仕込んだ料理にはかないません。あくまで看板メニューを支える補助的商品として使用するのがよいでしょう。

オーバーポーション

設定したレシピより多くの分量を使って、お客さまに提供してしまうのが「オーバーポーション」です。「ローストビーフは一皿5枚なのに6枚盛り付けてしまった」「常連さんにサービスでサラダを大盛りにした」これらの行為は、売上高は同じでも設定したものより多くの原価がかかってしまっているので、当然利益を圧迫します。

オーバーポーションを防ぐには、レシピをグラム単位できっちり作成し、それを順守することが大事です。とくに忙しい現場や家族経営のようなお店ではレシピの存在は把握していてもついつい目分量で調理してしまいがちですが、この数グラムのオーバーポーションが積もった結果、出るはずの利益が出なくなってしまうのです。例えば牛すじの煮込みなどの料理はあらかじめ袋に一皿分を小分けしておいてオーダーが入ったら温めて提供するなどの方法をとれば、決まった量を正確に素早く提供することができます。このようにレシピとオペレーションを合わせて決めておくとオーバーポーションを防ぎ、お客さまの満足度も上がります。

常連さんへのサービスはついしてしまいがちですが、過剰サービスは禁物です。同じメニューを頼んだ別のお客さまから見れば、同じ金額を払っているのに不公平感を感じてしまいます。それに一度サービスを受けると次も同程度のサービスを期待してしまうものです。そこでサービスがないと逆に不満に思ってしまうかもしれません。お客さまを喜ばせようとしたことが、利益を圧迫するだけでなくお客さまをがっかりさせてしまうのです。

歩留まり

食材は調理の過程で捨てる部位が出てくるため、丸々は使えません。例えば魚1匹を仕入れても、骨や内臓部分は捨ててしまいます。(捨てずに調理する場合もありますが、今回は捨てるという仮定で)つまり、実際に食べられて使用するのは全体の90%です。この割合のことを歩留まり(率)と言います。当然、90%しか使えなかったからといって10%分を仕入れ先から返金してもらえるわけではありません。原価を設定する際に、この歩留まりを計算に入れておかないと正しい原価が算出されません。

1kgあたり900円の魚を1匹(2kg)仕入れました。100gのお刺身を提供するのに原価はいくらでしょうか。魚の歩留まりは60%です。「1kg900円だから100gなら原価は90円、よし、150円で売ろう」これではお店はつぶれてしまいます。まず、使用できる部位は2kg×0.6で1.2kgです。魚1匹分の金額1800円を1.2kgで割ると、1500円(1kgあたり)となります。つまり、100gのお刺身であれば、原価は150円となるのです。これを150円で売っては利益はでないどころか経費を差し引けば赤字になってしまいますね。原価設定には必ず歩留まりを考慮しましょう。