移動型店舗という手段


開業の準備をしよう

お店を構えない開業もアリか!?

飲食店開業といってもお店を構えて開業するだけではありません。イベントスペースやビジネス街のランチタイムでやっているキッチンカー、フードトラックを見たことがあるかと思いますが、あのような食品営業用自動車による移動型店舗も一つの方法です。移動型店舗には固定型店舗にはないメリットやデメリットがありますので、店舗形態を検討する際にはそれらの違いをよく理解しておく必要があります。

移動型店舗のメリット

移動型店舗の一番のメリットはやはり固定型店舗に比べてイニシャルコストが低く抑えられるということでしょう。お店を構えるには物件を押さえなければいけません。契約に必要な保証金に敷金、前払いする家賃を支払ったら内装工事にとりかかります。内装工事が終わったら厨房機器や棚、テーブルなどの什器、食器などをそろえます。これだけでざっと700~1000万円の資金が必要です。それに加えて当面のランニングコストも用意しておかなければいけません。もちろん事業計画を立てたうえですすめるわけですが、金融機関からかなりの額の借入れをしなければいけませんので、心理的ハードルは高いです。しかし、移動型店舗であればそういった初期投資をおよそ半分くらいに圧縮することができます。食品製造及び営業用車両と備品があれば始められ、固定経費の大部分を占める家賃が発生しないので、ランニングコストも固定型店舗に比べるとかなり低く抑えることができます。

移動型店舗のもうひとつのメリットは最大の特徴である「お店を移動できる」という点です。飲食店経営はそのコンセプトや商圏設定などが非常に重要であり、「お店を構えたときに既に儲かるか儲からないかがほぼ決まる」といっても過言ではありません。最初の設定を間違えてしまうとお店を移転させるのは資金的に無理があり、現実的ではないためリカバリーが非常に困難になってしまいます。その点、移動型店舗であればその機動力を生かして「売れる地域に出店する」ことができますので、臨機応変に対応することが可能です。その日の天候や周辺環境、イベント開催状況などを考慮して戦略的に出店できることがメリットでもあり、移動型店舗のおもしろいところでもあります。昔に比べてSNSの普及により集客方法も多様化しています。ただお客さまが来るのを待つのではなく、自分からどんどん発信して攻めの営業を行ってみましょう。人気がでればイベントやフェスなどで開催企業から出店要請があることもあります。そうなれば営業車両を増やして多店舗展開したり、固定型店舗での営業を始めたりとステップアップしてみてもいいでしょう。

移動型店舗を始めるには?

それでは、移動型店舗を開業するにはどういった資格や許可が必要なのでしょうか。まずは移動型といえど飲食店を営業しますので、固定型店舗と同様、食品衛生責任者の資格が必要です。食品衛生責任者資格については別の項で詳しく解説していますのでそちらを参照してみてください。

次に許可関係ですが、飲食店として営業を行うための許可とその場所を使用するための使用許可が必要になってきます。

営業許可は出店する地域の営業許可が必要ですので、複数地域にまたがって営業する場合は、それぞれの管轄する地域の保健所で許可を申請しなければいけません。許可申請の際の主なチェック項目としては次のような項目があげられます。

・運転席と調理場は完全に仕切られているか

・給水タンクは設置され容量は充分であるか

・排水タンクは設置され容量は充分であるか

・シンクの数は充分であるか

・収納ケースや棚の設置は充分であるか

・石鹸は常時、清潔さを保てる状態であるか

・換気はしっかり考慮されているか

保健所によって規定が異なる場合がありますので、事前に改造車両の図面等をチェックしてもらうといいでしょう。

さて、移動型店舗の許可には大きく分けて二種類あります。ひとつは自動車に施設を設け、車内で調理、加工および販売する形態の「食品営業自動車業」で、もうひとつは自動車に施設を設け移動して食品を販売する形態の「食品移動自動車業」です。後者は移動型スーパーのような社内で調理などをせずに既にできあがった商品を販売するだけの許可ですので、飲食店として営業するには前者の許可が必要です。さらに、食品営業自動車業は扱う商品によって種類が分かれていますので、サンドイッチとコーヒーを販売したいといった時にはそれぞれの許可が必要となってきますので注意しなければいけません。

分 類

業 種

内 容

食品営業自動車(調理営業)

飲食店営業

弁当、サンドイッチなど

(アルコールOK)

 

菓子製造業

クレープ、パンなど

 

喫茶店営業

紅茶、コーヒー、アイスクリームなど

食品移動自動車(販売業)

食料品等販売業

パックのお弁当、惣菜

 

食肉販売業

包装された生肉

 

乳類販売業

包装された乳飲料

 

魚介類販売業

包装された鮮魚介類

以前にもまして食品を扱う事業者には厳しいチェックが入りますが、消費者の安全を守るために必要なことです。少しくらい大丈夫だろうと無許可で営業するのは絶対にやめましょう。

営業する場所についての使用許可は、路上で行う場合は警察署で道路使用許可をとらなければいけませんし、道路管理者に道路占用許可をとらなければいけません。公園などであればそこを管理している団体の許可が必要です。必要な書類や規定がそれぞれ異なりますので、必ず事前に相談や確認をしておきましょう。こちらも無許可で営業した場合は刑事処分や行政処分の対象となるので注意が必要です。なお、出店費用を支払うことで屋台村など敷地を開放しているところを利用できる場合もありますのでいろいろ検索してみましょう。そういったところでは比較的集客効果も高く、営業しやすい環境が整っているようです。