インショップという手段


開業の準備をしよう

商業施設への出店

飲食店を出す方法として、自分で賃貸物件をみつけて出店する方法以外に商業施設などのインショップとして出店するという方法もあります。飲食店のインショップには、百貨店のレストラン街や大型ショッピングモールのフードコートなどさまざまな形態があり、路面店などにはないメリットやデメリットがあります。そのことを踏まえて、ポイントを押さえたインショップに特化した経営戦略が必要となってきます。

インショップの強み

インショップにすることによるメリットは何と言ってもその高い集客力です。商業施設の集客プロモーション効果を最大限活用することができるので、その分お店の販売促進にかかる広告宣伝費を低く抑えることができます。また、商業施設はワンストップで複数店舗でのお買い物を促す施設なので、購買意欲の高い消費者が集まりやすいこともメリットと言えるでしょう。路面店にはないメリットとして、天候に左右されにくいという点も挙げられます。さらに、商業施設には家族連れやカップルなど幅広い層のお客さまが来ますので、路面店では見込めないような客層を取り込んでいくことも可能です。多くの人が訪れる商業施設に入っているお店ということで初めてのお客さまでも安心して利用できます。ネームバリューのある商業施設への出店は、そのお店にとっての良い実績となりその後の多店舗展開にも有利に働きます。

インショップ経営のポイント

インショップに来店するお客さまは他の買い物に来た途中にフラッと立ち寄るケースが多く、必ずしも最初からそのお店に来る目的で来店しているとは限りません。また、居並ぶインショップの前でどこにしようか悩むお客さまも多いです。そういった偶然に立ち寄ってくれたお客さまを逃さないような戦略が不可欠となります。そのために重要なのがサービス面の向上です。気持ちのよい接客や清潔な厨房、商品提供までの時間短縮など、お客さまのニーズがどこにあるのかを見極めて質の良いサービスを提供しなければなりません。経営者として最適なオペレーションを組み、そこに入るスタッフやアルバイトの育成に力を入れることで新規顧客の獲得やリピーターの増加を目指していきましょう。

インショップでは施設側が店舗の特色に偏りがないよう審査をしてラインナップを決めていますので、ライバル店は比較的少ないでしょう。(フードコートではいろんなジャンルのお店が並んでいますね)その代わり、集客力のない(売上の低い)店舗は契約の継続が難しくなることもあります。商業施設の集客力だけに頼るのではなく、季節のイベントに合わせて内装やメニューを変えるなどの工夫でお客さまを飽きさせないことが重要です。長期的な収益を確保するためには常にお店に対して新鮮さを感じてもらえるような取組みを行っていきましょう。

インショップの注意点

インショップの場合、路面店のように全く自由に営業することはできません。商業施設の営業日や営業時間に合わせて営業しなければならないので、勝手に定休日をつくったり営業時間を伸縮するようなことはできません。多くの商業施設は年中無休ですので、店長やアルバイトのシフトをうまく組んで良い労務環境をつくることが必要です。店舗の内装やファサード、メニューに関しても一定の基準があり、自由に決めることができない場合があります。また、メリットの裏返しですが施設の販売プロモーションに半強制的に協力をせざるを得ないこともあります。よくあるのが、商業施設内で一定額以上のお買い物をすると割引券が発行され、その分の割引をしたり、駐車場料金の割引額の負担をしたりといったものです。これらは少なからず利益を圧迫する項目ですので、その分を見込んだ営業活動をしていかなければなりません。

商業施設に出店する場合は場所代として出店費を施設側に納める必要があります。売上の20%を歩合賃料とし、最低保証として100万円といった内容の最低保証付きの歩合賃料のタイプが多いですが、インショップでは毎日の売上を施設側が一度預かり、出店費や共益費を引いた売上分が後日施設から送金されるというケースも見受けられます。また、固定の出店費の他に売上によって使用料が上乗せされることもありますので、よく契約内容を確認しておきましょう。こういった場合は、路面店のようなキャッシュフローにならないので十分な運転資金を用意しておく必要があります。

商業施設には名の知れた大手チェーン店しか入れないイメージがありますが、近年は施設間での差別化を図り、オリジナリティを出す意味で、小さな飲食店でも出店できるケースが増えています。これまで述べてきたように、商業施設への出店は集客においてはメリットが多い一方で、自由度が低いなど運営面でのデメリットも見過ごせません。施設の雰囲気とお店がマッチするか、また出店条件は事業計画に見合っているかなどをしっかりと検証して出店に臨みましょう。